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大阪地方裁判所 昭和54年(ワ)5030号 判決

一 請求原因1の事実(原告上田が本件特許権(一)、(二)を有すること)は当事者間に争いがない。

二 請求原因2については、成立に争いのない甲第四号証と弁論の全趣旨によると、本件特許権(二)について、原告上田が訴外光和アルミ工業株式会社のために専用実施権(本件専用実施権)を設定しその旨の登録を経ていたところ、原告会社が右訴外会社より本件専用実施権の譲渡を受けてこれを取得し、昭和五三年一二月二〇日その旨の登録を経由したことが認められる。

三 請求原因3(本件発明(一)の構成要件)について

本件発明(一)の構成要件について、原告上田の主張するところのものは、前示特許請求の範囲の記載を無視し独自の見解に基づき分説されたもので妥当でない。同原告は、「原告らの反論」1のとおり主張するけれども、不完全利用その他原告らの主張について、その当否を判断するにあたり、基礎をなすのは特許請求の範囲の記載であるから、まずこれに基づいて構成要件が定められるべきであることはいうまでもなく、「原告らの反論」1の主張は失当である。

本件発明(一)の構成要件は、前示特許請求の範囲の記載に基づき分説されたと認められる被告主張のとおりとするのが相当である。すなわち、

(イ) 上下に相対向して設けられた剛性材製断面逆U字型の鴨居と断面U字型の敷居とをそれぞれ各断面において両端から段部を突出させて上部室と下部室に区劃すること。

(ロ) 鴨居の下部室側壁及び敷居の下部室上部側壁には戸袋該当位置に切欠き部を設けること。

(ハ) 鴨居の上部室内を摺動するスライダーと敷居の下部室内下部を転動する転子とで端部から奇数番目の関節片を支持せしめること。

(ニ) 鴨居の切欠部縁よりも下部を転動する転子と敷居の切欠部縁よりも上部を転動する転子とで端部から偶数番目の関節片を水平向きに支持せしめること。

(ホ) これら両関節片にそれぞれその側縁係合部を滑合せしめて硬質扉を各隣接扉が相互に反対方向に九〇度回動し得るよう受支せしめること。

(ヘ) 硝子戸等の硬質扉を用いた横引きシヤツターであること。

以上(イ)ないし(ヘ)の構成要件に分説すべきである。

四 請求原因4(本件発明(一)の作用効果)について

成立に争いのない甲第一号証(本件発明(一)の公報)によれば、本件発明(一)における硝子等の硬質板を嵌め込んだ扉(硬質扉)を用いた横引きシヤツターは、閉鎖時において、硬質扉が鴨居と敷居を含む面内で関節片の上下部転子及びスライダーで強固に支持され、かつ硬質扉の係合部が関節片の摺動棒を気密に囲繞しており、したがつて多少の風圧を受けても安全に支持され、また、硬質扉をあたかもカーテンの如く簡単に開閉出来て、しかも気密に外部と区画出来るという作用効果を有するものと認めることができる。

五 請求原因5(本件発明(二)の構成要件)について

本件発明(二)の構成要件について、本件発明(一)に関し説示したのと同一の理由により、原告らの主張は採用し難く、被告主張のごとく次のとおり定めるのが相当である。すなわち、

(イ) 各硬質重量扉片をその縦框凹型側縁部において受支させる関節片は、

(a) 剛性材製縦片を長くした断面十字型に形成して、

(b) その縦片両先端を断面円形に膨出せしめ、

(c) 横片は根本部を肉厚に形成して両端部を同方向に直角曲げし、これらの各先端を断面円形又はC型の摺動棒に形成すること。

(ロ) 該関節片の摺動棒にそれぞれその被包角度が二四〇度を超える硬質重量扉の側縁凹型係合部を被嵌滑合せしめて硬質重量扉を各隣接扉が相互に反対方向に九〇度回動し得るよう摺動棒箇所で吊支すること。

(ハ) 硝子戸等の硬質重量扉連結用関節片装置であること。

以上(イ)ないし(ハ)の構成要件に分説すべきである。

六 請求原因6(本件発明(二)の作用効果)について

成立に争いのない甲第二号証(本件発明(二)の公報)によれば、本件発明(二)における硝子戸等の硬質重量扉連結用関節片装置は、次のような作用効果を有することが認められる。

(一) 関節片は、縦片を長くし、横片を左右対称にした十字型に形成せしめて、両側扉片を摺動棒を介して互いに反対方向に九〇度宛回動し得るので、硬質扉は、折り畳み操作が可能となり、一直線上に伸張できることとあいまつて、伸縮自在な気密な硬質扉が得られる。

(二) 閉鎖時の扉片にかかる風圧は、<1>関節片における、縦片の中心線と摺動棒の中心線との距離を腕長さとする彎曲モーメント、<2>横片を軸線に沿つて押圧する押圧力、<3>縦片に沿つて押圧する押圧力の三つに分解されるが、もつとも危険度の高い<1>の彎曲モーメントは、腕長さを極めて短く出来るから、相当に小さくすることが出来、<2>の押圧力が彎曲モーメントを小さくするように作用するから、さらに小さくなる。

(三) 扉片の側縁凹型係合部と関節片の摺動棒とは、少くとも二四〇度の囲繞角度で滑合されるから、滑合部では完全に気密が保持される。

(四) 摺動棒は、極めて細い材料で造られているが、扉片の全高さに沿つて関節片に連結されているから、十分の強度を保有する。

七 請求原因7の事実(イ号物件(一)ないし(五)の製造販売等)は、イ号物件(三)、(四)が商品として販売されたかの点を除き、当事者間に争いがない。

八 請求原因8(本件発明(一)とイ号物件(一)、(二)との対比)について

1 本件発明(一)の構成要件について、これを前示三の(イ)ないし(ヘ)とすべきで、請求原因3の分説によるべきでないことは前説示のとおりであり、また、イ号物件(一)、(二)の構成についての請求原因8の主張は、前認定のイ号物件(一)、(二)の構成(別紙第一、第二目録記載の構成)に照らすと、必要とされる構成要素を欠落し、もしくは具体的構成要素を不当な総括的概念にまとめ、或いは具体的構成を不当に抽象的な機能的表現におきかえているものであり、前認定のイ号物件(一)、(二)の構成を必要かつ十分に抽出、表示したものでなく妥当でないから、原告上田による対比の主張は、前提となる本件発明(一)の構成要件及びイ号物件(一)、(二)の構成の把握において不正確不当である以上、採用し難いものといわなければならない。2 そこで、さきに判示した本件発明(一)の構成要件(イ)ないし(ヘ)(前記三)とイ号物件(一)、(二)の構成(別紙第一、第二目録記載)とを対比すると、イ号物件(一)、(二)が構成要件(ホ)、(ヘ)を充足することは被告の認めるところであるが、イ号物件(一)、(二)は、構成要件(イ)ないし(ニ)に対応する構成において、被告指摘のとおりの相違があるから、構成要件(イ)ないし(ニ)を具備しないものというべきである。

すなわち、イ号物件(一)は、鴨居及び敷居の断面形状が、鴨居については下向きに開口したほぼコ字形であり、敷居については<省略>の階段状をなしている点、並びに、鴨居及び敷居の断面において両端から段部を突出させて上部室と下部室とに区劃するという構成を採用していない点において構成要件(イ)を充足しないこと、鴨居及び敷居の各側壁に「切欠き部」が設けられていない点において構成要件(ロ)を充足しないこと、固定扉の戸枠側縦框51bと戸枠縦框60bとの接合部及び可動扉の戸枠側縦框51aと戸枠縦框60aとの接合部(右各接合部は端部から奇数番目に当る)には関節片に相当する部材が設けられていない点において構成要件(ハ)を充足しないこと、可動扉と固定扉とを連結する関節片40(この関節片は端部から偶数番目に当る)にはその上端にも鴨居及び敷居を「転動する転子」が設けられていない点において構成要件(ニ)を充足しないこと、イ号物件(二)は、鴨居及び敷居の各断面において両端から段部を突出させて上部室と下部室に区劃するという構成を採用していない点において構成要件(イ)を充足しないこと、鴨居及び敷居の各側壁に「切欠き部」が設けられていない点において構成要件(ロ)を充足しないこと、戸枠側縦框60と左右両端の各扉とは、戸枠側縦框60に形成された円筒状の摺動管60aの管壁に沿つて円弧状をなす扉の縦框側縁係合部51Rを滑合させ、上下両端において摺動管60aと扉縦框51の空隙部51´にそれぞれ合成樹脂製の連結部材40の挿入部40´を嵌挿することにより連結されているものであつて、右戸枠側縦框と左右両端の各扉との各接合部(いずれも端部から奇数番目に当る)には「関節片」に相当する部材は設けられておらず、また、右から二枚目の扉と三枚目の扉との接合部(端部から奇数番目に当る)に存在する連結部材40(関節片に該当すると考えられる。)の上部にはガイドピン34が、下部にはガイドピン34´が各突設されているところ、右ガイドピン34´が敷居を「転動する転子」に該当するとはいえず、これらの各点において構成要件(ハ)を充足しないこと、右端の扉と右から二枚目の扉との接合部及び右から三枚目の扉と左端の扉との接合部(いずれも端部から偶数番目に当る)に存在する連結部材40(関節片に該当すると考えられる。)の上端にも下端にも、鴨居及び敷居を「転動する転子」が設けられていない点において構成要件(ニ)を充足しないことが明らかである。

3 イ号物件(一)、(二)が本件発明(一)の構成要件(イ)ないし(ニ)を充足せず、これと異る構成を成すことは、両者の目的、作用効果が異ることから導かれる当然の帰結である。

すなわち、前掲甲第一号証によれば、雨戸の代りにシヤツターを用いる場合には必ずその内側に気密性を有する硝子戸を用いる必要があるが、硝子戸を用いるときに、従来の技術では、柱間の間隔に制限があつて間隔を一定長さ以上に拡げることが出来ないという不便があつたところ、本件発明(一)は、これを改良し、「ガラス戸の如き硬質板を用いた横引きシヤツターを気密に、且つ頑丈に形成せしめて而も軽快に折畳み開閉し得る姿で提供せんとする」(前掲甲第一号証の一欄二二行目から三一行目まで)ことを目的としたものであり、この目的に対応して、前認定の頑丈で気密を保ち簡単に開閉できるという作用効果をもたらすのであるのに対し、イ号物件(一)、(二)の構成及び成立に争いのない乙第三、第四号証から考えると、イ号物件(一)、(二)は、むしろ主として室内ドアとして使用することを目的とし、これに対応して気密性を犠牲にしても取付けを簡便にし、レール上の掃除を容易にする等の作用効果を達成せんとするものであることが明らかである。

4 原告らの反論2について

(一) 原告上田は、本件発明(一)にもともと含まれていた三箇の発明のうち二箇の発明が分割特許出願され独立の特許として登録されたから、残る一箇の発明のみが本件発明(一)の内容となる旨主張するけれども、右残されたと主張する一箇の発明の内容なるものは、本件発明(一)の特許請求の範囲に記載された構成要素の一部を省略などしたものであるから、本件発明(一)の技術的範囲を特許請求の範囲の記載を超えて拡大する結果となるところ、単に分割特許出願がなされ登録されたとの一事から、これを是認することは出来ないのであつて、原告上田の主張は、特許法七〇条、三六条五項の明文を無視するもので到底首肯しえない。

(二) 次に、原告上田は、鴨居と敷居とを上部室と下部室とに区別すること、戸袋該当位置に切欠き部を設けること、鴨居の上部を摺動するスライダー、敷居を転動する転子を設けることはいずれも重要な構成要素となるものではない旨主張するけれども、右主張もまた失当である。

すなわち、本件発明(一)は、前記目的のもとに前記作用効果を達成するために前記構成要件を採用したものであつて、いずれも必須の要件であり、したがつて、その構成要素の一つを欠いても右作用効果を奏しえず、右目的を達成できないものであるから、構成要素のうち重要でないものはないというべきである。

原告上田が重要でないと主張する構成要素に則して若干付言すると、前認定の事実に前掲甲第一号証によれば、本件発明(一)は、雨戸の代りに使用される硝子戸等の硬質扉を用いた横引きシヤツターであつて、軽快に折畳み開閉することができ、扉の閉鎖時には鴨居と敷居を含む面内で扉を強固かつ安全に支持して気密を保ち、扉の開放時には折り畳んで戸袋に収納することが出来るものであるところ、これを達成するために、扉の閉鎖時には、各扉と扉との間の関節片が鴨居と敷居を含む面内にスライダー及び転子等により強固に支持されて位置せられ、扉の開放時には、戸袋内において、端部から奇数番目の関節片のみが鴨居と敷居を含む面内に位置せられ、端部から偶数番目の関節片は鴨居と敷居を含む面内から外れて側方に突出した状態となり、もつて、扉が折り畳まれて戸袋内に収納されるという方法を採用したものであり、そのためにこそ、鴨居及び敷居をそれぞれ上部室と下部室とに区劃するとともに、鴨居の下部室側壁及び敷居の下部室上部側壁の戸袋該当位置に切欠き部を設けておき、まず、奇数番目の関節片を支持するのに鴨居の上部室内を摺動するスライダーと敷居の下部室内下部を転動する転子とをもつてこれにあて、右関節片が、戸袋内を含む全ての場所において、鴨居と敷居を含む面内に位置せしめられ、かつ左右に移動しうるようにし、一方、偶数番目の関節片を支持するのに鴨居の切欠部縁よりも下部を転動する転子と敷居の切欠部縁よりも上部を転動する転子とをもつてこれにあて、右関節片が、戸袋内においては、鴨居及び敷居を含む面内から切欠き部を通じて外れ側方に突出して扉が折り畳まれるようにし、戸袋外においては、鴨居と敷居を含む面内に位置せしめられ、かつ左右に移動しうるようにしたものである。右のとおり原告上田の挙示する三つの構成要素は、いずれも本件発明(一)に不可欠のものであるから、これが重要でないとする同原告の主張が理由のないことは明らかである。

(三) 更に、原告上田は、イ号物件(一)、(二)が、(1)両端を縦框で支持され上下に対向する鴨居と敷居が設けられ、(2) 屏風折れになる硬質扉の左右の一端を一方の縦框に固定し、固定端から算えて奇数番目の折れ目の上下を鴨居と敷居に沿つて可動にし、(3) 右により屏風折れ扉を折り畳みして縦框間を開閉する装置の構造であるとし、これを前提に主張しているが、イ号物件(一)、(二)の構成を右の(1)ないし(3)であるとすることは、さきに説示したイ号物件(一)、(二)の構成を(一)´ないし(五)´のとおり分説することの不当であることと同様である。イ号物件(一)、(二)では切欠き部等がそもそも必要でないから設けなかつたにすぎないとの同原告の主張については、切欠き部が必要不可欠である本件発明(一)に対し、その必要性がないとされるイ号物件(一)、(二)は、まさにその点において本件発明(一)とは別異のものであることを指摘すれば十分であり、また、二枚扉の連結部が鴨居、敷居から突出する構造になつている点をとらえて、原告上田の主張するように、切欠き部があるとは到底認めることができないのである。

(四) 最後に、原告上田の不完全利用の主張についてであるが、不完全利用の法理を特別の要件のもとに認めるべきかについては議論の存するところであり、右法理は、当該発明の一部の構成要件を欠くにもかかわらず、なおかつこれを構成要件の全部充足の場合と同様に評価しようとするものであるから、結果として発明の技術的範囲に関する基本原則を否定することともなるので、みだりに適用されるべきものではないと考えるが、仮にこれを肯定するとしても、本件においては、イ号物件(一)、(二)の構成が本件発明(一)の構成要件と相違する点は、前認定のとおり、いずれも本件発明(一)にとつて必須の重要な構成要件にかかわり、目的、作用効果において重要な相違をもたらしているから、原告上田の設定する成立要件に従つても、イ号物件(一)、(二)について不完全利用の関係が成立する余地はない。

5 以上のとおり、イ号物件(一)、(二)は、本件発明(一)の技術的範囲に属しないものといわなければならない。

九 請求原因9(本件発明(二)とイ号物件(三)ないし(五)との対比)について

イ号物件(三)ないし(五)の構成(別紙第三ないし第五目録記載)が、前五で認定の本件発明(二)の構成要件(イ)ないし(ハ)を充足するかについて、以下検討する。

1 構成要件(イ)について

(一) イ号物件(三)について

イ号物件(三)において、折畳みドアー連結用関節片40´は、(a)´ アルミニウム材製縦片41´を長くし、横片42´、42´の各端部を同方向に斜に屈曲し、右横片を左右対称になるように右縦片とほぼ十字型の形状に交差させ、断面<省略>形に形成して、(b)´右縦片両先端の一方を断面円形に、他方を断面ほぼ半円形に各膨出せしめ、(c)´右各横片は、各端部を同方向に斜に屈曲し、これらの各先端を断面C型の摺動管43´に形成させているものであるところ、これを構成要件(イ)と対比すると、右(a)´の断面形状は断面十字型をなすものといつて妨げないから、右(a)´は構成要件(イ)の(a)を、また、右(b)´の縦片一方端のほぼ半円形の断面形状は円形の断面形状の単なる設計変更にすぎないものと解されるから、右(b)´は構成要件(イ)の(b)をそれぞれ充足するということができるが、右(c)´の横片は、各先端部を同方向に斜に屈曲させ各先端を断面C型の摺動管に形成させてはいるが、根本部を肉厚に形成しておらず、また、各先端部を直角曲げしていないから、右(C)´は、構成要件(イ)の(C)を充足しないというべきであり、結局、イ号物件(三)は構成要件(イ)を充足しない。

(二) イ号物件(四)について

イ号物件(四)において、折畳みドアー連結用関節片40´は、(a)´アルミニウム製縦片41´を長くした断面T字型に形成して、(b)´右縦片の一方の先端を断面円型に膨出せしめ、(c) 横片42´、42´の各端部を同方向に斜に屈曲し、これらの各先端を断面C型の摺動管43´に形成させているものであるところ、これを構成要件(イ)と対比すると、右(a)´の断面形状は十字型でなく、右(b)´の縦片の一方端のみが断面円形に膨出せしめられているにすぎず、右(c)´の横片の根本部は肉厚に形成されておらず、また、各先端部を直角曲げしていないから、右(a)´、(b)´、(c)´は、それぞれ構成要件(イ)の(a)、(b)、(c)を充足せず、イ号物件(四)は、構成要件(イ)を充足しない。

(三) イ号物件(五)について

イ号物件(五)において、折畳みドアー連結用関節片40は、(a)アルミニウム製縦片41´を長くし、構片42´、42´の各端部を同方向に斜に屈曲し、右横片を右縦片の一方の先端において左右対称になるようにほぼT字型の形状に直交させ、断面<省略>形に形成して、(b)´右縦片の一方の先端を屈曲した細長い長方形の形状にして、断面<省略>形に膨出せしめ、(c)´右横片の各端部を同方向に斜に屈曲し、これらの各先端を断面C型の摺動管43´に形成させているものであるところ、これを構成要件(イ)と対比すると、右(a)´の断面形状は十字型でなく、右(b)´の縦片の両先端は断面円形に膨出せしめられておらず、右(c)´の横片の根本部は肉厚に形成されておらず、また、各先端部を直角曲げしていないから、右(a)´、(b)´、(c)´は、構成要件(イ)の(a)、(b)、(c)を充足せず、イ号物件(五)は、構成要件(イ)を充足しない。

2 ところで、前掲甲第二号証によれば、本件発明(二)は、雨戸の代りにシヤツターを用いる場合の改良にかかるものであつて、「柱間の間隔の広い箇所を気密に閉め切つて大きな風圧に耐えることの出来る扉を硝子戸の如き重い且つ割れ易い硬質材を用いて折り畳み式横引きシヤツターの姿で製造するに於いて重い硬質材製扉片を相互に気密に且つ安全に連結する関節片装置を提供せんとする」(右甲号証の公報一欄二五行目から三〇行目まで)ことを目的とすることが認められ、右目的に対応して前六で認定の作用効果を達成すべく前五で認定の構成要件を採用したものということができる。とりわけ、閉鎖時の扉片にかかる風圧を安全に受支せしめるために構成要件(イ)の(a)、(b)、(c)の構成にみられる断面形状の関節片を採用したものということができるが、このことは、本件発明(二)の出願過程において、出願人より提出された成立に争いのない乙第二号証の一一の特許異議答弁書において、「(1) 関節片を剛性材製の縦片を長くした断面十字型に形成した。(1)´ 斯くすれば扉片に風圧を受けた場合最も破損し易い関節片の内最も曲げモーメントの大きくかかる中心部縦片が大巾に補強される(縦片の長さが長くなれば縦片を断面矩形と見做した場合其の断面係数Z=<省略>で表わされるからZの値が著しく大きくなる)。(2) 関節片縦片の両先端を断面円形に膨出せしめた。(2)´ 斯くすることで縦片の断面係数を更に増強すると共に美的感覚を増進させることになる。(3) 関節片横片の根本部を肉厚に形成して両端部を同方向に直角曲げし、之等の各先端を断面円形又はC型の摺動棒に形成させた。(3) 斯くすることに依り扉片にかかる風圧を関節片の耐曲げモーメント力で受支させるのでなく関節片横片の耐押圧力でより安全に受支せしめることが出来るようになる。」と述べられ、強調されていることからも裏付けられる。

これに対し、イ号物件(一)ないし(五)の前認定の構成、及びイ号物件(五)を使用したイ号物件(一)であることにつき争いのない検甲第一号証、イ号物件(三)を使用した被告製造、販売にかかる二つ折りドアーであることにつき争いのない検甲第三号証、前掲乙第三、第四号証、並びにイ号物件(一)、(二)が主として室内ドアーとして使用されることを目的としたものであるとの前認定の事実を併せ考えると、イ号物件(三)ないし(五)は、主として室内ドアーとして使用される折畳みドアーの連結用関節片として使用されることを目的とし、これに対応して、閉鎖時に扉片にかかる風圧を安全に受支せしめるという作用効果を必要としないものであると認められる。

イ号物件(三)ないし(五)が本件発明(二)の構成要件(イ)を充足しないでこれと異る構成を成すことは、両者の目的、作用効果の異ることに由来するものということができる。

原告らは、イ号物件(三)ないし(五)の関節片の断面形状を本件発明(二)のそれから変形させたことは右関節片を用いる用途によつて風などの外力に対する強度を加減させたためにすぎないと主張するけれども、まさに、強度の必要な本件発明(二)において構成要件(イ)を採用し、強度のそれほど必要でないイ号物件(三)ないし(五)が構成要件(イ)を充足しない構成を用いているという点において、両者は別異のものであるということができるのであり、原告らの右主張は失当である。

原告らの不完全利用の主張については、前八4(四)で説示したのと同様の理由により、これを認めることはできない。

3 以上のとおり、イ号物件(三)ないし(五)は、その余の構成要件充足の有無について判断するまでもなく、本件発明(二)の技術的範囲に属しないといわなければならない。

一〇 結語

そうだとすると、被告が業としてイ号物件(一)ないし(五)を製造、販売することは、なんら本件特許権(一)、(二)もしくは本件専用実施権を侵害するものではないから、右侵害を前提とする原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、すべて理由がない。

よつて、原告らの本件請求をいずれも失当として棄却することとする。

〔編註〕 本件における請求原因は左のとおりである。

1 原告上田百合子(以下「原告上田」という)は、次の(一)、(二)記載の特許権(以下(一)の特許権を「本件特許権(一)」、(二)の特許権を「本件特許権(二)」といい、その権利にかかる発明をそれぞれ「本件発明(一)、本件発明(二)」という)を有する。

(一)(1) 発明の名称

硝子戸等の硬質扉を用いた横引きシヤツター

(2) 出願

昭和四五年一二月一一日(特願昭四五―一一〇九七二)

(3) 公告

昭和五〇年九月九日(特公昭五〇―二七六六三)

(4) 登録

昭和五一年五月一四日(第八一四七二六号)

(5) 特許請求の範囲

上下に相対向して設けられた剛性材製断面逆U字型の鴨居と断面U字型の敷居とをそれぞれ各断面に於いて両端から段部を突出させて上部室と下部室に区画し、鴨居の下部室側壁及び敷居の下部室上部側壁には戸袋該当位置に切欠き部を設け、鴨居の上部室内を摺動するスライダーと敷居の下部室内下部を転動する転子とで端部から奇数番目の関節片を支持せしめ、鴨居の切欠部縁よりも下部を転動する転子と敷居の切欠部縁よりも上部を転動する転子とで端部から偶数番目の関節片を水平向きに支持せしめ、之等両関節片にそれぞれ其の側縁係合部を滑合せしめて硬質扉を各隣接扉が相互に反対方向に九〇度回動し得るよう受支せしめたことを特徴とする硝子戸等の硬質扉を用いた横引きシヤツター。

(二)(1) 発明の名称

硝子戸等の硬質重量扉連結用関節片装置

(2) 出願

昭和四五年一二月一一日(特願昭四九―一〇二五五七)

(3) 公告

昭和五〇年一一月七日(特公昭五〇―三四三四二)

(4) 登録

昭和五二年一〇月一二日(第八八六〇六二号)

(5) 特許請求の範囲

各硬質重量扉片を其の縦框凹型側縁部に於いて受支させる関節片は剛性材製縦片を長くした断面十字型に形成して其の縦片両先端を断面円形に膨出せしめ、横片は根本部を肉厚に形成して両端部を同方向に直角曲げし、之等の各先端を断面円形又はC型の摺動棒に形成させ、該関節片の摺動棒にそれぞれ其の被包角度が二四〇度を超える硬質重量扉の側縁凹型係合部を被嵌滑合せしめて硬質重量扉を各隣接扉が相互に反対方向に九〇度回動し得るよう摺動棒箇所で吊支したことを特徴とする硝子戸等の硬質重量扉連結用関節片装置。

2 原告光和金属工業株式会社(以下「原告会社」という)は、本件特許権(二)の専用実施権(以下「本件専用実施権」という)を有する。

3 本件発明(一)の構成要件

(一) 上下に相対向してスライダー(摺動子)が摺動する区劃室を有する鴨居と転子が転動する区劃室を有する敷居を剛性材をもつて設ける。

(二) 右鴨居のスライダーと敷居の転子とで扉框から奇数番目の扉関節片を支持する。

(三) 右関節片は剛性材製断面十字型に形成させ十字型の横片の両端部を一方向に曲げその先端を断面円形又はC型の摺動棒に形成させる。

(四) 右摺動棒を囲繞して被嵌される硬質扉の係合部の囲繞角度を二四〇度以上にしてかつ隣接する硬質扉が相互に反対方向に九〇度回動できるようにする。

(五) 右の関節片によつて二枚以上の硬質扉を連結し、あたかもカーテンの如く開閉できる横引きシヤツター。

4 本件発明(一)の作用効果

剛性材製の鴨居と敷居との間に剛性材製関節片に支持せられ、金属等の硬質材料製框で囲繞された硝子等の硬質板を嵌めこんだ扉をあたかもカーテンの如く簡単に折りたたんで開閉できてかつ多少の風圧を受けても安全に支持できる。

5 本件発明(二)の構成要件

(一) 剛性材製で縦片を長くした断面十字型に形成し

(二) 横片は根本部を肉厚に形成して両端部を同方向に直角曲げし、これらの各先端を断面円形又はC型の摺動棒に形成させ

(三) 右関節片の摺動棒にそれぞれその被包角度が二四〇度を超える硬質重量扉の側縁凹型係合部を被嵌滑合せしめる。

6 本件発明(二)の作用効果

(一) 二枚以上の硬質重量扉を各隣接扉が相互に反対方向に九〇度回動し得るよう摺動棒箇所で連結できる。

(二) 硬質扉片を気密に連結できる。

(三) 関節片に集中負荷された扉片の面積に応ずる風圧に対し耐えられる強度が高い。

7 被告は、別紙第一、第二、第三、第四、第五目録記載の各物件(以下、順次イ号物件(一)、(二)、(三)、(四)、(五)という)を業として製造、販売し、販売のために展示、広告している。

8 本件発明(一)とイ号物件(一)、(二)との対比

イ号物件(一)、(二)は、左記(一)´ないし(五)´の構成を有し、それぞれ本件発明(一)の構成要件(一)ないし(五)を具備し、作用効果も同一であるから、本件発明(一)の技術的範囲に属する。

(一)´ 上下に相対向して鴨居と敷居を設けている。

(二)´ 右鴨居と敷居に沿つて摺動子又は転子が転動するようになつている。

(三)´ 右摺動子又は転動子とで扉関節片を支持している。

(四)´ 右関節片によつて硬質扉をカーテンのように折りたたんで開閉できるようになつている。

(五)´ 右関節片の断面を口型にして扉展開時に扉面に直角方向に働く圧力に抵抗できる構造をもたしている。

9 本件発明(二)とイ号物件(三)ないし(五)との対比

イ号物件(三)ないし(五)は、本件発明(二)の構成要件(一)の「断面十字型に形成し」とあるところをその作用効果に大した影響がない程度にこれを変形したものにすぎず、本件発明(二)の技術的範囲に属する。

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